日本ではシーズンイベントのひとつとしてとらえられることの多いクリスマスですが、フィンランドでは、クリスマスはどのようにとらえられているのでしょうか。
フィンランドは国民の多くがキリスト教(プロテスタント)を信仰していますので、イエス・キリストのお誕生日をお祝いするという認識が一番にあります。ただ、クリスマスの風俗、習慣は必ずしもキリスト教から来ているわけではなく、クリスマスは、過越祭(すぎこしのまつり)という一年間の収穫をお祝いするお祭りがその起源です。
過越祭というのはどのようなお祭りなのでしょう?
キリスト教が伝来する前からあった冬至のお祭りです。フィンランド語で「ヨウル」といいます。今ではクリスマスのこともヨウルといいますが、昔はヨウルといえば過越祭のことでした。フィンランドをはじめとするヨーロッパ各国は日本よりだいぶ寒い地域なので、秋に作物を収穫したあと、冬は食べ物を確保することが難しく一年のうちで最も貧しい食生活になるのですが、冬至が過ぎると太陽の力が強くなって春になることから、暖かな春が来ることを祝って、それまで貧しい食事をしながら耐えて貯蔵していた食料を使ってごちそうを作り、家族でお祝いをします。それがヨウルです。このヨウルが今のクリスマスの習慣のはじまりです。
ヨーロッパ諸国はクリスマスの期間が長いですね。
日本では12月24日、25日がクリスマスということになるのでしょうけど、ヨーロッパでは、アドベント(待降節)が始まってから約1ヶ月がクリスマスになります。アドベントは年によって変わりますが、だいたい11月の終わりから12月の初頭で、そこから1月6日までがクリスマスです。日本はお正月があるので25日が終わるとすぐに松飾りが出てきてお正月モードになりますが、ヨーロッパは年をまたぎ約1ヶ月間続きます。日照時間の少ないフィンランドは、一番南に位置しているヘルシンキでも、冬は午前10時頃に日の出、午後2時から3時くらいには日が没みますから、日が差さない暗い時間が本当に長いです。暗い時間に出勤して日中は屋内で仕事、帰宅するときにはもう真っ暗。そういう生活を毎日していると、鬱々としてしまうのですが、アドベントが始まってクリスマスになると、街がクリスマスの装飾やライトで煌びやかになって、雪の反射と光で街が明るくなると、比例して気持ちも明るくなります。精神面においてもクリスマスは重要な日として認識されていますね。